虎の城

 2月2日(水)
 歴史小説は、結論とある程度のプロセスが決まっているだけに、先人の名作を超えるのはかなりの力業です。それゆえ、時にキャラクター設定が過剰になることもあります。子母沢寛の「勝海舟」と司馬遼太郎の「花神」を読めば、維新期には海江田信義という同姓同名の別人がいたのかと思う方が、むしろ自然なくらいでしょう。
 知名度の割にはあまり主人公になったことのない人物を取り上げるのは、こうしたギャップを避ける一つの方向です。
 火坂雅志さんの話題作「虎の城」。主人公の藤堂高虎、彼が仕えた豊臣秀長は、それぞれ主役となった小説等がない訳じゃありません。とはいえ、それほど読まれてはいないだけに、戦国物として新鮮な印象があるのは大きなメリットです。
 「虎の城」の凄さは、読んでいるうちにこの「脇役に光」のメリットをすっかり忘れてしまうところ。評判になった「築城に凝らされた創意工夫」ばかりでなく、柴田勝家に対する評価、創業期の武功派と安定期の能吏との対立という同じ構造を抱えながら、滅んだ豊臣家、栄えた徳川家の差を今日的に分析している点なども、読み応えのあるところでした。過剰なキャラクター設定からは免れ切れない部分は残るにしても、秀作と呼ばれる通りの面白さでした。
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 郡山城趾は高虎が仕えた豊臣秀長在城当時の縄張りのまま残っている(@大和郡山市)
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by maruyamamasaki | 2005-02-03 00:28 | 関西の小説と映画


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